その後も、僕は、その場で、カブトムシとクワガタを眺めながら、1人、喜びに浸っていたんですけど、しばらくすると、また、幹の上方から、歩いて下りて来る昆虫の気配に気付きました。
「今度は、何や?」
「お~っ!これ、クワガタのメスとちゃうんか!?」
オスと同じく、クワガタのメスも、一目散に、木の根元に向かって、歩き去って行きました。
距離的に、きっと、この2人の男女(?)が交尾をして、子孫を残す事になるんでしょうね。
カブトムシだけが、王者の風格で、その場に、静かに佇んでいました。
僕は、山で遊び始めて19年目にして、初めて目撃したカブトムシを、ちょっとだけでも捕まえて、触れてみたい衝動に駆られはしたんですけど、やめておきました。
カブトムシに最後に触れたのは、小学生の頃やったと思いますので、もう、かれこれ40年近くぶりにはなるんですけど、それでも、やめておきました。
これだけ、目撃するのがレアな昆虫ですので、何か、触れたら、あかんような気がしました。
その日、僕は、不思議な幸福感に満たされながら、山の土地を後にしました。
ほんでもって、その翌日、再び、山を訪れた僕は、「おるわけ、ない。」とは分かっていながらも、到着するや否や、まず最初に、前日に、カブトムシを目撃した木の、同じ場所を確認しに行きました。
ほな、やっぱり、カブトムシの姿は、そこには、ありませんでした。根元にも、クワガタはいてませんでした。
せやけど、同じ木の別の場所から、また、樹液が出ていたようで、そこに、カナブンが2匹、いてました。
「やっぱり、もう、おらんわな・・・・・。」
そないに思いながら、ふと、地面に視線を落した僕は、あるものを発見しました。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「カブトムシの頭や・・・・・・!!!!!」
「あいつ、鳥に食われてもうたんや・・・・・。そら、あんなとこにおったら、目立つわ。。。。。」
何とも言えない気持ちになりました・・・・・・。
カブトムシ君!おおきに!
19年目にして、初めて見る事が出来た、君の雄姿は忘れへんぞ!
また、来年、会えたらええな!
”サヨナラ”は、言えへんからな。また、来年、必ず、戻っておいでや!
待ってるから!
~完~